誕生日が覚えられない

誕生日が覚えられない。自分のも他人のも。もちろん自分の生まれた日は知っている。だが私には誕生日が四つほどある。五つだったかもしれない。問題は誰にどの誕生日を教えたのかということだ。

「君って誕生日いつだったっけ?」

生きていればこの質問は一年に何回かされる。相手が自分に初めてその質問をしてきたのだったら、落ち着いて好きな日付を答えればよい。だが相手が以前にもその質問をしていた場合、これは要注意だ。ここで以前と違う日付を答え、相手が後で気づいた場合厄介なことになる。しかし焦って、

「ええ~いつだったかなぁ~」

などと言ってはいけない。こいつは自分の誕生日すら覚えていないアホだ。そう思われる危険性がある。

だがしかし観念して本当の誕生日を言ってもいけない。誕生日当日に

「おっめでとぉ~う!」などと勢い余って渡された花束の中に蜂がいたりでもしたら、その日は一日悲惨なことになるだろう。自分の誕生日くらい邪魔しないでくれというものだ。

なぜ誕生日を当日に祝う風潮があるのだろう。イエスキリストの誕生日だって前日にお祝いするではないか。祝うという行為自体は変わらないのだから、本人の希望する日に移してやってもいいのではないか。いっそもう統一しよう。

母の日というのはいいものだ。街中の店が数週間も前から騒ぎ立ててくれるから忘れようがない。私にとって一番覚えにくいのが母の誕生日である。6月の15日から29日くらいの間にあることは知っている。その間のいつなのかが覚えられないのだ。その期間は幼少期からずっとそわそわしている。だから母の誕生日は母の日にお祝いするようにしてほしい。切実な願いだ。

母の日、父の日、こどもの日。それに加えて祖母の日、祖父の日、友人の日、残りの人の日、ペットの日。これくらい作っておけば問題ないだろう。全人類がこの決まった日に決まった相手に誕生日プレゼントをあげるようにすればいい。店もキャンペーンがやりやすくて嬉しいだろう。

恋人の日がないとか夫婦の日がないとか家族一緒にお祝いができないじゃないかとかそんな意見が聞こえてくるかもしれないがそんなことはどうでもいい。だれか私を誕生日問題から解放してほしい。